マエストロはルリさんのフルートの音色から、実は彼女が「優しくて、とても繊細で傷つきやすい人」であることを見抜き、コンサート当日になって「ハバネラ」の歌唱パートを取りやめ。フルートがメインで優しい旋律を奏でる「メヌエット」からコンサートを始めることにしました。

 コンダクターの真横で「メヌエット」を吹くルリさん。その目線の先には、6歳のときに離婚してしまったという父と母が、それぞれの家族を連れて演奏を聞きに来ています。

 一方、40年前から晴見フィルの一員としてバイオリンを弾いてきたコンマス・近藤さん(津田寛治)には夢がありました。指揮者になりたかった。その夢を聞いたマエストロは、晴見フィルにとって最後の演奏になる曲の指揮をコンマスに託します。

 マエストロは言わずと知れた世界的な天才コンダクター。近藤さんは地方のアマチュアです。当然、指揮者としても音楽家としても実力は劣るわけで、マエストロの後に指揮棒を振ることなどためらってしまうわけですが、そんな近藤さんにマエストロは告げるのです。

「指揮者に必要なのは、何だと思いますか? アパッシオナート、音楽への情熱です!」

 演奏曲は「ジプシーの踊り」。盛り上がるやつですね。