ところで、毎回、政治とカネの問題が起きると、政治家はいつも「秘書が。秘書が」といって逃げるのが常套手段だが、企業を持ち出すまでもなく、政治家が知らないうちに秘書が多額の金額を報告しない、収支報告書に記載しないというようなことがあり得るはずはない。

 今回の派閥の裏金問題も、起訴されたのはその他大勢の政治家で、大物といわれる政治家は逃げ切るようである。

 その裏金問題は岸田文雄首相も直撃した。

 岸田(宏池会)の元事務局長・佐々木和男(80)が、1月19日、2020年までの3年間で約三千万円のパーティー収入などを派閥の収支報告書に記載しなかったとして、東京地検特捜部に、政治資金規制法違反の罪で略式起訴された。

 だが、その佐々木が文春の直撃にこう答えている。

――不記載は岸田首相にも報告した?

「パー券のことはしないですね。他の派閥もそうなんじゃないですか?」

――佐々木さんの判断?

「気付かなかった。事務的なミスです。まぁでも、他のとことは違ってキックバックじゃなかったしね」

だが、次の質問には苦渋の表情をにじませたという。

――佐々木さんが全て被りますか?

「被るって……(笑)。でも今回思いましたけど、政治資金規制法では会計責任者に全て責任が行くんですよね。ホントに……」

――おかしいですよね。

「うん……。忸怩たる思いです。恥じ入っています」

 政治資金規正法では、収支報告書の記載義務が課せられるのは会計責任者のみ。議員との連座性を導入すべきだという声は絶えず出るが、それを実行しようという覚悟のある政治家はほとんどいない。

 岸田派でも、佐々木のみが責任を負わされた格好だ。

――佐々木さんだけではできない?

「うん……」

 最後は、そう悔しさをにじませたという。

 岸田首相はこの言葉をどう聞くのだろう。