『オードリーANN』開始から6年、厳密なトークゾーンを設け、それぞれに必ず毎週フリートーク作りを課すラジオ番組は珍しい。それでも春日は1週も休まず、苦手なフリートークを下ろし続けた。

 そうして迎えたのが、15年の『すべらない話』だった。コンビで呼ばれたオードリーだったが、フリートーク番組の頂点である『すべらない』でハネたのは春日だった。春日はこの日、「MVS(Most Valuable すべらない話)」を与えられている。

 オードリーの「しゃべれる方」若林の目の前で「何も考えてない方」春日がフリートークの頂点に立ったのだ。

 同年末の『ANN』で、若林はこのときの心境を振り返っている。春日の成長に対する少しの喜びと、自分の努力が相方のスター性の前に屈した大いなる悔しさにまみれた放送は、最高にエキサイティングだった。

「(オードリーは)厳密に言ったら、コンビじゃないからね。ライバルだよ」

 その若林の言葉に爆笑しながら、春日はきっと本気で喜んでいたと思う。お笑いコンビの関係性はそれぞれだが、あの日の『すべらない』がオードリーにとって、つまりは春日の人生において、もっとも重要な日だったと春日自身が感じていたからこその選択だったのだろう。

 スタジオでは総スカンされていたけれど、リトルトゥースはその意味を知っているのだ。

(文=新越谷ノリヲ)