内容は、ほとんどが若林の考えてきたエピソードトークと企画もの。このころの春日を、若林は「何も考えてこなかった」「全部、俺ひとりで考えてしゃべっていた」と何度もラジオで明かしている。

 その甲斐もあって若林はラジオ日本の『フリートーカー・ジャック!』で放送作家・藤井青銅氏に見いだされ、同局で『オードリー若林はフリートーカー・キング!』という冠番組を与えられている。あの『M-1』より以前、まだ誰もオードリーを知らなかった。

 この藤井氏との出会いが、『M-1』準優勝を経て『オードリーのオールナイトニッポン』(ニッポン放送)につながっている。現在でも、藤井氏は同番組を作家として担当し、毎週、若林と2人でトークを練っている関係だ。

「オードリーのしゃべれる方」は圧倒的に若林であり、春日は「何も考えてない方」だった。

『オードリーANN』開始に伴い、若林と藤井氏は春日に毎週フリートークの時間を与えることになる。トークゾーンは20分~30分程度。それまでの10年の芸歴の中で、若林がディレクションするままに衣装を変え、ネタを覚え、髪型を整えて「トゥース!」とか言っていただけの春日の芸人人生で初めて「自分で考える作業」が生まれた。

『M-1』以降、オードリーは空前のブレークを経験する。それは主に、春日というキャラクターのブレークだった。テレビスターとしての春日と、コンビのブレーンでありトーク担当の若林。その構図は揺るぎないものだったし、この役割分担が2人の間で相乗効果を生み、オードリーを国民的タレントに押し上げる原動力になった。