◆和宮が欲していた場所に座ったのは、太陽のような家茂だった
幼い頃、可愛らしい着物を着て、遊び道具を目の前に置かれても、母の愛がなければ、体の中は空洞だった。手に欠損があった自分を、生まれなかった子として扱い、弟・和宮だけを“この家の光”として慈しんできた母。宮さんは「あんたみたいに肝の据わった子と違う」「優しくて細やか」「私が守ってあげへんと」と言う母を、彼女は決して恨むでなく、ひたすら愛を求めた。自分をちゃんと見て、向き合って欲しかった。
そんな彼女にとって、江戸に下ることは千載一遇のチャンスと言えた。これで、ついに母の愛を手に入れたと思った。しかし実際には、離れてなお、本物の和宮のことしか頭にない母の姿を目の当たりにすることとなった。しかし、そこに太陽のような人が現れた。和宮にとっては母を独り占めする理由でしかなかった将軍・家茂だ。家茂が、和宮が欲していた場所、彼女の目の前に座った。