よしながふみ原作コミックを実写化し、強い支持を集めてきたNHKドラマ『大奥』が終盤に入った。28日に放送された第19話では、公武合体により、帝の弟君であるとして迎えられた和宮(岸井ゆきの)が偽物で、しかも女性だったことが発覚する。

 すべての事情を知ってなお、優しく受け止める14代将軍・徳川家茂(志田彩良)。和宮の心が解きほぐれていく姿に、人が人と向き合う美しさを見た。

◆男と偽った和宮だが、そもそも彼女にとってガワなど意味がなかった

 朝廷から降嫁してきた和宮は偽物だった。母である観行院(平岩紙)と乳母の土御門(山村紅葉)によれば、本物の和宮が首をくくり、ほかの男子を出せぬ事情があったために、実の姉が代わりとなって来たのだという。帝も事情を知らぬ一大事に瀧山(古川雄大)は激怒するが、家茂は、このまま和宮が女性であることを秘すことにするのだった。

 女将軍の始まりとなった3代家光(堀田真由)。彼女は当初、その素性を隠された、女であることを奪われた人だった。無理やりに髪を切られ、男のなりをさせられ、名前も奪われた。有功(お万の方)と出会い、千恵として受け止めてもらったうえで、将軍・家光として自分の足で皆の前に立てるまでに、多くの苦しみを背負ってきた。その姿からは、女であることを奪われる辛さや、何より名前を奪われることで自己を失う恐ろしさが伝わってきた。

 和宮からは、またまったく違った苦しみが伝わって来る。彼女は、何より母が自分を見てくれることを欲していた。そのためには、女としてのなりや、名前を捨てても構わなかった。自分の立てた企てなのだから、当然ではあるものの、それにしても彼女からは男のなりをしていることへの抵抗は、露ほども感じられない。むしろ彼女にとって、はなからガワに大きな意味はなかった。