(本記事は、萩原博子氏の著書『投資バカ 50歳を過ぎたら取ってはいけないお金のリスク』宝島社、2018年8月24日刊の中から一部を抜粋・編集しています)

【 『「50歳を過ぎたら取ってはいけないお金のリスク」のつくり方』シリーズ】
(1)初心者が投資をする前に心がける「5つの鉄則」とは?
(2)実はスゴイ「公的な保険」がこれだけ優れている4つの理由
 
※以下、書籍より抜粋

私たちは全員すでに大きな保険に加入済み

私たちは、健康保険や年金保険、労災保険、雇用保険、介護保険などという公的な保険に加入しています。

この「保険」に、毎月、多額の保険料を納めています。

ですから、民間の保険に入る前に、まずこれらの保険の機能をチェックし、足りなければ民間の保険に入ることにするべきでしょう。

給与明細をしっかり見ると驚くと思いますが、サラリーマンの場合、年収400万円だと、社会保険と税金を合わせて給料の約2割を毎月支払っているのです。

ここからは、実はすごい「公的保険の威力」を見ていきましょう。

1.大黒柱が亡くなれば「遺族年金」がもらえる

一家の大黒柱である夫が死亡すると、残された家族の生活が困窮しないように支給されるのが「遺族年金」です。

遺族年金をもらうためには、受給資格期間が25年以上あることが条件なのですが、加入した人が25年未満でも、子ども(18歳以下)と妻を残して他界したら、加入期間25年と換算されて遺族年金が支給されます。

支給額は子どもの数によっても異なりますが、サラリーマンの場合、妻と子ども2人を残して亡くなったとすると、残された家族には、月に15万円前後の遺族年金が、子どもが18歳になるまで支給されます。

また、サラリーマンであれば、会社からまとまった額の死亡退職金が出る可能性があり、夫が組んだ住宅ローンが残っていたら、ほとんどは団体信用生命保険がついているので、残りのローンがチャラになります。

また、夫に万が一のことがあったら、残された妻は、自分が頑張らねばと働きに出るケースが多いでしょう。

住宅ローンがなくなった家に住み、死亡退職金をもらい、月々15万円前後の遺族年金をもらい、妻も働けば、民間保険に入らなくても残された家族が路頭に迷うことはないはずです。

ただ、そこで心配なのは、子どもの教育費。

日本は、OECD34カ国中、国が最も大学などの高等教育にお金を出さない国。

その費用は、家計につけまわされているので、心配なら教育費として子ども1人につき1000万円くらいの死亡保障を確保しておくといいでしょう。

この保障は、子どもが社会人になったら必要なくなります。

2.医療費は大病をしても月9万円ほどで済む

日本人は全員すでに多額の医療保険に入っています。

日本が誇る健康保険(アメリカには日本の国民健康保険のような制度はない)は、国民の誰もが病気になったら医療を低価格で受けられる制度であり、病気にならないようにと健康診断まで行ってくれます。

会社員なら健康保険組合、会社に健康保険がない人は協会けんぽ、自営業は国民健康保険に加入し、種類は違えど、働く世代の医療費負担は3割。

つまり病気になっても医療費の7割は健康保険が負担してくれるのです。

しかも、がんや心筋梗塞など重大な病気になっても、「高額療養費制度」という、3割負担をさらに下げてくれる制度があります。

これを使うと、月100万円の治療を受けても、3割負担の30万円ではなく、標準報酬月額28万~50万円の人なら、自己負担は9万円弱で済んでしまうのです。

3.大手術で入院しても、すぐ退院

私の友人に東京女子医大で腎臓がんの全摘手術をした人がいます。

今は開腹ではなく内視鏡手術なので、患者の負担もかなり軽減されています。

手術の前々日に入院をし、手術は約3時間で終了。その後、病院に3泊して退院したので、入院日数は6日間。

お見舞いに行く暇もありませんでした。

本人の自己負担は高額療養費制度を使い、食事代やパジャマ代を加えて約11万円。

貯蓄で十分、間に合いました。

民間の日額5000円の医療保険に入っていましたが、6日間なので、3万円の保険金と手術手当金の5万円が出ました。

腎臓全摘という大手術でも、入院日数はそんなものです。

このように医療の進化に伴い、大病をしても入院日数が減っています。

厚生労働省の患者調査(2014年)によると、一般病棟に入院した日数は0~14日が67%、15~30日が16.2%と、約83%の人が1カ月以内に退院しています。

病気別に見ても医学の発達と患者の負担を減らすため、入院日数を少なくし、通院に切り替えています。

たとえ抗がん剤治療でも、近年では抗がん剤の進歩や、副作用として起こる症状を緩和したり、副作用に対する治療が進歩してきたことから入院せず外来で治療をすることが多くなっています。

ですから、民間の医療保険に入っていても、入院日額を稼ぐことができません。

4.「高度先進医療」を受けている人はほんのわずか

さらに日本では、みんなが受けるような医療は、どんどん健康保険の対象に入ってきています。

もちろん、がんの陽子線治療や重粒子線治療など、健康保険の対象外で300万円前後の費用がかかる先進治療もありますが、こうした治療を多くの人が受けているかといえば、そうでもありません。

現在、がんの治療をしている人は全国に150万人ほどいますが、そのうちで陽子線治療や重粒子線治療を受けているのは5000人弱。

つまり、がんになってこうした治療を受ける確率は、0.3%強ということです。ちなみに、2015年度の先進医療技術の実績報告を見ると、利用者が最も多いのは「多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術」(9877人)で平均技術料は約54万円。

2番目に多い「前眼部三次元画像解析」(7788人)だと約3800円でした。

こうしたものは「高度先進医療」で、民間の医療保険では盛んに特約を勧めていますが、保険料が月100円程度で最高2000万円の治療を保障しているというのは、裏を返せば、ほとんどの人は「高度先進医療」を使っていないということです。

ですから、お守り代わりに付けておくというならそれもいいですが、保険会社が宣伝しているほど魅力的で多用されているものではないということです。

(画像=Webサイトより ※クリックするとAmazonに飛びます)

荻原博子(おぎわら・ひろこ)
経済ジャーナリスト。大学卒業後、経済事務所勤務を経てフリーの経済ジャーナリストとして独立。経済の仕組みを生活に根ざした視点から、わかりやすく解説する第一人者としてテレビ、ラジオ、新聞、雑誌など各種メディアで活躍中。近著に『投資なんか、おやめなさい』(新潮新書)、『老前破産 年金支給70歳時代のお金サバイバル』(朝日新書)、『荻原博子のグレート老後 人生100年時代の節約術』(毎日新聞出版)など。

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