「僕はガンマニアでもあるので、主人公が使う銃は全部本物なんです。ハリウッドで本物の銃を使うときは、そのライセンスを持っているセーフティーオフィサーがプロップハウスに行って実銃を借りなきゃいけないし、撮影中にはすべての主要スタッフとキャストに、その銃が本当に空かどうかちゃんと確かめて一人ひとりに見せるっていうチェックが必要なんです。それをやる係としてジェイを雇ったんですが、それが奇跡だった。僕が映画監督デビューする前に、テレビのエピソード演出をやってたんですけど、27年前の話ですけどね、そのときに僕が追いかけてた取材対象がジェイだったんです。映画の特殊効果をやってるスゴイ親父ってことで取材していて、たまたま今回、クルーリストを見ていたら、ジェイって、あのジェイ? ってことになって。現場で出会ったら、お互いに覚えていたんです。彼はもういいお爺さんになってて、再会を祝ったんですが、現場では特殊メーク部がやらかしを繰り返している。できるって言ったことが後になってできなくなったり、それをやるには資格がないとか、いろいろ言い始めたりとかしていて。そしたらジェイがそこにステップインしてくれて、『俺、その資格持ってるよ』『俺がやってやるよ』って、彼がいたことによって特殊メーク部が見落としてた部分、彼らが足りなかった部分を最高の形で補うことができた。彼には感謝しかないですし、今回の映画のMVPはジェイなんです」

 永井豪からオリジナルキャラクターが送られてきたことに始まり、数々の奇跡が『唐獅子仮面』という作品を彩っていた。

 映画が好きであればあるほど「永井豪の実写化」という言葉には頭を抱えてしまうかもしれない。ポスターを見た瞬間に「私の映画ではない」と感じる女性も少なくないだろう。ヌーディティとバイオレンス、確かに過激な映像の目白押しでもある。

 だが、文章を仕事にしている身の上で、こんな言葉しか浮かんでこないのは少々恥ずかしくもあるが、もう書いておく。

『唐獅子仮面』ちゃんとしっかり、誰が見てもきっと、すごく面白いよ。

 劇場でこの映画に出会った方々が、同じ言葉を大切な人に伝えてくれますように。

(取材・文・写真=新越谷ノリヲ)