「自分たちの世代より、おじさんとかおばさんたちって、すごく不幸だから、現実を受け入れられないから。いろんなひどい目に遭って、いろんな歪みに遭って、得をしていないから、過去の少年時代、少女時代のことでしか楽しめない」

 筆者は、くるまの指す「おじさん/おばさん」の世代である。正直、びびってたじろいでしまった。同年代の永野が「あなた、正しいこと言ってるけど人気でないと思うよ!」と代弁してくれなかったら、寝込んでしまうところだった。単なる跳ねっ返りの若造が言っているのではない。M-1王者が言っているのだ。

 今のテレビで、もっとも「ウソがない」をやっているのが永野だろう。その永野に触発された部分もあったに違いない。

 人を傷つけない笑いがどうした、芸能界は縦の関係がこうなんだ、そういう評価軸に、くるまは一切価値を感じていない。人に好かれることより、正確に伝えることを優先している。そのためには誤解を恐れない。むしろ、強い言葉でいったん誤解させてから真意を説いたほうが効果的であろうと考え、それを実行している。そして「だから、おじさんおばさん向けの作品がバズるんだ」という結論に、スムーズにたどり着いてみせる。

 さらに永野は「今の令和ロマンの漫才にも、おじさんおばさん向けに作っている部分があるのか」と問う。これにも、くるまは淀みなく明快に回答する。そしてその答えは、そのまま「令和ロマンがM-1を獲った理由」となる。ここに、この番組のマジックが生まれている。