インセプションの舞台は多層構造の夢
「インセプション」の舞台は、現実世界と何層にもなってできている夢の世界です。今回はこの複雑な仕組みを、1つずつ簡単に解説していきます。
現実世界「飛行機の中」
まずは物語の始まりとなる現実世界「飛行機」の場面です。フィシャー社の跡継ぎである御曹司のロバート・フィッシャーに会社を潰してしまうようなアイデアを植え付けることをミッションとして依頼されたコブは依頼者であるサイトーの力を借りてロバートの乗る飛行機へ入り込みます。
サイトーの裏工作によりロバートの所有するプライベートジェットに乗り込んだコブは、彼を薬で眠らせミッションをクリアすべく夢の世界に入り込んでいきます。
第1階層「架空のロスの街中」
最初に訪れたのは、第1階層の雨が降りしきる「ロスの街中」でした。ここでの目的は、ロバートに遺言の存在を意識させること、そして「父の跡を継ぐだけでいいのか」と彼自身に意識させることです。
ロバートの名づけ親でもあるフィッシャー社の幹部ピーター・ブラウニングに姿を変えたコブの仲間イームスがことば巧みにロバートを誘導するシーンが描かれます。
第2階層「ホテル」
第1階層での目的を達成した後は、第2階層「ホテル」でのミッションです。ここでは、ロバートに「何かを作り出したい」という意識を持たせることを目的とし、コブたちは行動し始めます。
この第2階層では、想定外のハプニングとしてロバートの潜在意識による攻撃が発生しますが、ロバートにここは夢の中だとあえて告げることでなんとかピンチを回避していきます。
第3階層「雪山の病院」
第3階層にたどり着き、ミッションはようやく最終目的であったインセプションの決行へと移ります。ここでは、ロバートに「ただ父親の後を継ぐのではなく、自分の意思で新しい道を切り開くのだ」という意識を持たせるのです。
虚無(LIMBO)
第3階層で予期せぬハプニングが発生すると、ロバートは虚無の世界へと落とされてしまいます。この虚無の世界というのが少し特殊で難しい仕組みなのです。
ドリームマシンを使って入り込むことのできる夢の世界は、第1階層・第2階層・第3階層と回を重ねながらさらに深い夢の中へと入り込むことができます。しかし、夢の世界とはいえどこまでも無限に世界が続いていくというわけではないのです。
より深い夢へ入り込んでいくたびに、夢の世界は不安定になっていきます。そしていずれたどり着いてしまうのが、虚無の世界なのです。英語ではこの虚無の世界はlimboと呼ばれています。
この映画の中ではlimboは虚無という訳し方をされていますが、実際には監獄・辺獄・忘却といった訳し方もできるようです。そのことからも分かるように、虚無の世界とは潜在意識以外に何も存在しない場所を抽象的に表しているのです。