◆どちらが本当の意味での「悪女」なのか

 彼女の父は働いていない。父の父、つまり祖父は彼女たちが住んでいる場所からハルキが住むマンションなど、そのあたり一帯の地主でありマンションのオーナーでもあるようだ。つまりは超お金持ち、だから父は働く必要がない。娘を溺愛している両親は、ハルキへの気持ちを察しており、その恋心を励まし焚きつけている。

『泥濘の食卓』
 ちふゆのフォーク遣いや食べ方を見ていると、お金はあるが躾もろくにしていない両親が浮き彫りになってくる。わがままで、自分の欲しいものが手に入らないとかんしゃくを起こすのがちふゆなのだ。

 ふたりとも大事な人への愛は深いが、順を追って恋を自分のものにしようとしている深愛と、手段を選ばず欲しいものをすぐに手に入れようとするちふゆ。どちらが本当の意味での「悪女」なのかはまだわからない。