◆幸不幸は常に隣り合わせ。子どもは別人格

郁子の原動力は子どもたちだ。「苦労はあるけど、子どもからもらう幸せは、子どもからしかもらえない幸せでもある」と彼女は言う。もちろん、それは子どもがいなければ不幸だという話ではない。禍福(かふく)はあざなえる縄のごとし、人生ずっとハッピー、ずっとアンハッピーということはない。幸不幸は常に隣り合わせ、ひょっとしたら裏表だったりもする。

たとえ子どもであっても、別人格で別の人生。全寮制の高校から逃げてきた息子が、八田の家で化粧に興味をもち、大きなイヤリングを下げているのを見て、郁子はふと不安げな表情になる。彼女は今後、この息子を全面的に受け入れることができるのだろうか。

<文/亀山早苗>

【亀山早苗】

フリーライター。著書に『くまモン力ー人を惹きつける愛と魅力の秘密』がある。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。Twitter:@viofatalevio