◆「言っちゃダメなことはあるけど、思っちゃダメなことはない」

「あなた」では、あれだけストレートだった彼が、本作ではやや屈折した愛をふるわせる。

 これが第2話の後半で素晴らしい名場面として描かれている。肝心の“相手”がいない他の登場人物たちである潮ゆくえ(多部未華子)、佐藤紅葉(神尾楓珠)、深雪夜々(今田美桜)は、なぜか自然と椿の家に集まっていく。

 遅れてやってきたゆくえが持ってきたお菓子を食べながら、4人はこれまで誰とも共有できなかった感情を吐露していく。人が話している時にやたらとお菓子をもぐもぐしているのが気になる椿だったが、いやいや彼が一番いいことを言ってくれる。

「言っちゃダメなことはたくさんあるけど、思っちゃダメなことはないです」

 椿にこう言われると、視聴者は「はい、その通りです」とドラマ内の登場人物のひとりになった気分で即答したくなる。

 松下洸平との約束事を守る限り、このひと肌に優しいドラマを安心して見続けられそうな気がする。

<文/加賀谷健>

【加賀谷健】

音楽プロダクションで企画プロデュースの傍ら、大学時代から夢中の「イケメンと映画」をテーマにコラムを執筆している。ジャンルを問わない雑食性を活かして「BANGER!!!」他寄稿中。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業。Twitter:@1895cu