◆ストーリーとは別次元での“松下洸平物語”

木曜劇場『いちばんすきな花』第2話より ©︎フジテレビ
2話より(以下、同じ)
 この体験では、何より松下と視聴者の間に確かな信頼関係ができていることを大前提にしている。松下の演技は、とにかく丁寧で、視聴者を物語の中へ優しく、スムースに導く。

 それはまず松下が特に感情表現に優れた俳優だからだ。キャラクターの理解とそれを元にした台詞の細やかな発し方など、ミリ単位の工夫が施こされている。そのため視聴者は安心して心地よく見ていられる。

 ときにうねるような感情の発火点を演技のめりはりとして用意することも忘れない。例えば第1話では、婚約者に振られ、意気消沈する椿がソファでふて寝し、チャイムが鳴ると飛び起きる緩急が絶妙だ。

 こうした演技の細部を視聴者との約束事としてひとつひとつ積み上げた結果、ドラマのストーリーとは別次元で、言わば“松下洸平物語”が成立し、物語られることになるのだ。