◆ちょっと年上、の効能

もちろん、性別を区別せず一緒に取り組むからこそ得られるものもある。灘高の授業では、男性と女性が対話することで、双方にとって学びの場となった。ここでは、灘高生からすると「ちょっと年上の」女性、というのが肝だったのだという。

「塾や予備校の、チューターのような存在ですね。少し前に受験勉強をしていた先輩が『自分のときはこうだったよ』と教えてくれる。先生と違って絶対的な上下関係がないから、生徒も自分に引き寄せて考えたり、違いを見つけたりできる……性、ジェンダーの話は、距離が近すぎる相手とはしにくいものですよね」

それは、大人でも共感できることではないだろうか。

「実際、共学の高校での勤務が長いある教員は、このような授業はふだん顔を合わせるクラスメイトの男女ではむずかしいのでは?と言っていました。SNSでは“灘高を共学にすればいい”みたいなコメントもありましたが、そんな単純な話ではありません」