◆その時にはわからなかった「痛み」が明らかになる

 その「なんでこんなことになっているんだろう」「この人は何を思っていたんだろう」という謎が特に目立つのが、広瀬すずが演じるイッコという女性だ。

 彼女は真緒里という本名があるはずなのに、なぜかその名前も過去も捨てたようで、どうやら今は自分の住む部屋を持たず、複数いる元カレの住居を渡り歩いて(?)生活しているようだ。

 実質的な主人公であるアイナ・ジ・エンド演じるキリエもまた、路花という本名があるはずなのに、そうは名乗っていないし、やはり特定の住まいを持たないまま東京に来ているようだ。

 イッコは、普段は大きな声で話せないが圧倒的な歌声を持つキリエのマネジャーになると告げるのだが、「かつての知り合い」という以外では、「なぜそこまでするのか」の理由は、その時点ではやはりわからない。

 その後に明かされるのは、壮絶なまでの2人の「痛み」だった。共に名前と過去を捨てた彼女たちが、ふたたびめぐり逢ったことは奇跡であると同時に、この東京のこの地に辿り着くまでにさまざまな出来事が折り重なった「理由」がある。その先に待ち受けていた出来事に、涙する人は多いだろう。