もちろんベテランだけがプレッシャーと戦っているわけでは無い。見取り図さんはネタ終わりで「いつ噛んでもおかしくなかった」。ダイアンさんは「入りすごいミスしましたけど」など、数々の賞を受賞している2組だとしても、やはり緊張しないことは不可能なのだ。「笑わせる」という単純な行為が、いかに難しく、いかに苦労して生みだすかがわかるコメント達だった。

 その反面、ネタがウケると、ネタ終わりの安堵感と先ほどまで圧し掛かっていた重圧から解放により、えも言われぬ状態になるのだ。ネタ終わりの東京03さんを見るとそれが良く分かる。終始満面の笑みを浮かべている3人。ツッコミの飯塚さんが「本当に楽しい舞台ですね」というと角田さんが「最高!」と付け加える。これはネタをしてウケたことがある芸人しか体験できない状態。極度のプレッシャーからの解放と目的達成から来る多幸感、喜び、深い満足感、高揚感、ウェルビーイングといったポジティブ感情が集結された、「ランナーズハイ」ならぬ「ネタズハイ」である。……まあランナーズハイほどすごいことではないのだが。

「ネタ」は日常生活では滅多に解放しないほどのテンションで行う。声量が静かであったり、語気は穏やかであったとしても、内に秘めたテンションはもれなくハイテンションであることは間違いない。そんな普段なら使わないハイテンションは、一度上げてしまうとそう簡単におさまるものではなく、ウケた芸人は、ネタ終わりに落ち着きを取り戻したような姿をしていても、どこかハイテンションが垣間見えるのだ。