その日、鵜久森に何が起こったのか。星崎透(奥平大兼)は10月4日に撮影していた映像から、D組のリーダー格である相楽琉偉(加藤清史郎)の指示に従って波乱を巻き起こしている浜岡修吾(青木柚)が、生徒でもないのに鳳来高校の制服を着て登校しているのを発見し、第8話では相楽の関与が疑われたが、これは誤解だった。そしてD組の生徒たちが浜岡を発見し、D組女子カーストの頂点に立つ西野美月(茅島みずき)に頼まれて侵入したことを明かす。
そのタイミングで西野、野辺桐子(田牧そら)、金澤優芽(田鍋梨々花)の3人が揃って学校を無断欠席。D組の中では3人が怪しいという空気が漂うが、九条は追い詰められた3人が「最悪」の結末を考えているのではと不安に駆られ、3人を探しに教室を飛び出す。他の生徒たちも、鵜久森のために二度と同じ悲劇は起こしたくないと西野たちを探しに出る。そしてビルの屋上から飛び降りようとしていた3人を月野春香(柿原りんか)たちが説得し、西野たちは教室に戻ってすべてを打ち明け始めた。
ある日、浜岡から「最近学校全然楽しくないんだろ?」と見透かされたように話しかけられた西野は、九条と鵜久森によってD組の雰囲気が変わり、自分が居場所を失いそうだという焦りから「金さえ払えば俺がひっくり返してやる」という浜岡の“悪魔のささやき”を聞き入れてしまう。そして浜岡が鳳来高校の制服を着て侵入したのは、化学準備室にカメラを仕掛けるためだった。そこで東風谷葵(當真あみ)が鵜久森への好意を告白する様子を偶然撮影できた浜岡に「これ使ってひっくり返してこいよ」と言われるがままに、西野は鵜久森のロッカーに「東風谷との話をバラされたくなければ放課後に新校舎の吹き抜け廊下へ来ること」とメッセージを送り、そこで西野が持つ動画のSDカードの奪い合いの中であの悲劇が起こったのだった。東風谷は自分を守るためにあんなことになったのかと責任を感じるが、鵜久森は東風谷を守るためだけに動いたのではなかった。ひとりでやってきた鵜久森は「あなたは何がしたいの?」「誰かを傷つけて笑ってることの、何が楽しいの?」「標的をつくって笑ってる時間なんて、大切な人生の無駄な時間でしかない」と西野に語りかけ、「2023年10月4日。今日はあなたが誰かを傷つける日じゃない。あなたが人を傷つけることをやめる日に、私が変える」と宣言していたのだ。
目の前で起こった悲劇。落ちていきながらもずっと西野の顔を見続けていた鵜久森の顔。確かに、西野が他人を傷つけることをやめるきっかけになったかもしれない。だが、それでも西野は「そんなつもりじゃなかった」と言い訳をする。そんな自己弁護は、「逃げるなよ!」という九条の怒りで否定される。想像力に欠けた「そんなつもりじゃない」行為を繰り返し、他人の心に痛みを積もらせてきた結果がこれなのだと。鵜久森を追い詰めてきたことへの反省の言葉が出てこないことこそ、ただの自己弁護に過ぎないのだと。そして鵜久森の母・美雪(吉田羊)は「私はこの出来事を許すことはできない」ときっぱり言いながら、どう償うべきかわからないという生徒たちに「一生懸命、忘れないでほしい。あの子も楽しそうにこの毎日を生きていたということを。娘が……叶が、最後に強く生き抜いた顔をしていたというのなら」という願いを伝えた。それは九条がずっと訴えてきた「他人に対する想像力を持つこと」とつながることだろう。