とりあえず僕だけ出てネタはせずにオープニングトークとMCをやるという構成に変更し、まもなく出番というタイミングでようやく与座と電話が繋がった。マネージャーさんが「今どこですか?」と怒りと呆れをミックスした口調で質問すると与座は「ごめん、今起きた」と。その後2ステージ目には何とか間に合ったが、与座は移動するタクシーの中で優雅にコーヒーを飲む姿を当時のツイッターにアップしていた。相方はかなりの大物だとそのとき感じた。
遅刻というハプニングはある意味日常茶飯事なのだが、僕は一度本当の「予期せぬ事態」に陥ったことがある。それは「笑っていいとも!」(フジテレビ系)の出演を控えた前日のこと。僕は「完売劇場」(テレビ朝日系)の収録終わりで番組のプロデューサーとご飯を食べに行ったのだ。こじゃれた居酒屋のような場所でご飯を食べていると、口の中に異物感を感じ、慌ててその異物を吐き出した。その物体が何かわからず「?」となっていると、プロデューサーが僕を見て爆笑し始めたのだ。「何がおかしいんですか?」と聞くと、そのプロデューサーが携帯を取り出し、僕の顔を写真で撮り「これ見てみ」と。そこに映っていたのは前歯の無い僕の顔だった。
僕は食事中に前歯が折れてしまったのだ。その時食べていたメニューは今でも忘れはしない「若鳥の柔らかからあげ」だった。どうせなら固いメニューで折れたかった。よりによって「柔らかからあげ」なんて。その瞬間、翌日の生放送が頭をよぎり、このままだとネタ中前歯がないことになる。さすがに前歯が無い状態で出演するわけにはいかない。しかし現時刻は21時を過ぎている。やれることが限られる時間だ。
とはいってもやれることなど元々限られており、とりあえず自分が通っている歯科医院に連絡をした。明らかに終わっている時間帯なのだが、奇跡的に担当の先生が電話に出たのだ。事情を説明し、翌日朝イチで仮歯を入れてもらうことになった。前歯が折れたのは悪運だが、そのハプニングを修正出来たのは持って生まれた強運が故かもしれない。