後藤氏のこの言葉を、筆者(男性)は当初しっくりと受け止めることができなかった。筆者自身、共学制の芸術系大学で講義を行っている立場にあり、リーダーシップを発揮する女子学生を少なからず目にしてきたからだ。しかし、後藤氏の次の言葉で目を開かされた。「あなたが学生だとして、異性が多い教室で積極的にリーダーになろうとするでしょうか」。確かに、筆者が勤める大学の女子の割合は約66%と、一般的な大学よりもかなり高いのだ。

「男女別学の意義はそこにあります。理系の学部は特に顕著ですが、多くの大学は男性中心で、女性がのびのびと活躍できる環境ではないのです。女子大だけに頼るわけにはいきません。政府の教育未来創造会議は理系分野を専攻する大学生の割合を2032年ごろまでに現在の35%から50%程度に増やすといっていますが、並行して女性が抑圧されずに学べる土壌をつくらなければならない。このところ東京工業大学を筆頭に理工系大学が入学者選抜に女子枠を設ける動きがあります。しかし、私に言わせれば『覚悟』が足りません。女子枠を設けなくても女性が入学したくなるように大学の環境自体を変えていく必要があります。ですから、女子枠は「時限」にして女性学生比率の達成年度を明確にして廃止を目指すべきなんです」

 地方産業の空洞化や少子高齢化といった社会課題が山積している現代。そこに活路を見出すには、男性中心の価値観に縛られず、のびやかに活躍する女性の存在が鍵となる。高等教育における女性の立ち位置を、再点検することが求められる。