金網デスマッチが終わり、2つ目の企画に移行するタイミングで僕は時計を見た。時計はすでに10時40分過ぎ。番組終了まで15分しかない。あれだけ引っ張ってきた企画がこんな短い時間で終わるのか? と少し疑問に思いつつも、一体何が始まるのかと期待に胸をときめかせていた。
2つ目の企画のプレゼンターが登場した。なんとあのロンドンブーツ1号2号の「田村淳」さんだったのだ。予想外のプレゼンターに対してスタジオは静まり返り、松本さんは「珍しい」と少しあっけにとられ、浜田さんに至っては「こんなところ出てくんの?」と驚きを隠せない状況だった。淳さんは初回放送以来、9年半ぶりの登場。ダウンタウンの涙、そしてプレゼンターは淳さん、間違いなく何かしてくれるという期待感から、ワクワクは倍増していく。
そんな淳さんがプレゼンした説は「番宣CMでダウンタウンがガッツリ泣いてたら流石に視聴率爆上がり説」だった。普段テレビでダウンタウンのお二人が揃って泣くことなどほぼ無い。それを利用し番宣すれば聴率が上がるのではないかという説だったのだ。目薬を使って涙を流す様を何度も撮影し、感動的な何かがあるように見せそれをCMに使っただけ。僕たちが期待したあの大粒の涙はただの目薬だったのだ。
僕は思わず「やられた」と口に出した。ただこの「やられた」は騙されて嫌だったという気持ちではなく、ここまで感情を揺さぶられたことに対しての賛辞の声だ。昨今のドッキリでここまで清々しい気持ちになれるものは無かった。最近のドッキリは過去のドッキリのようにベタなものばかりではなく、芸能人が人間として限界に達した様だったり、時には感動的なものだったりと、いろいろな趣向をこらしてドッキリを仕掛け、その内容によっては仕掛けが行き過ぎてしまい、仕掛けられた側が可哀相などという賛否が巻き起こるのが定番の形だった。