◆スターに不可能はないのか
子どもの取り違えをテーマにした主演映画『そして父になる』(2013年)で父親役を演じたとき、福山は当初、次のように懸念していた。
「僕自身が気にしていたのは、とにかく父親に見えないと思うので、大丈夫ですかねということを是枝さんにうかがったんです」(映画.comインタビュー「福山雅治に大きな糧をもたらした運命的な出会いと新たな意欲」より引用)
なるほど、スター福山でも演じる役柄に対するこうした不安を抱くものなのか。「全然大丈夫です」という是枝裕和監督の後押しがあり、仕事人間だった男が息子に向き合い、「そして父になる」過程を繊細な息遣いで表現した。福山のスター性がすごいのは、単に佇まいが華やかだとかいうことではなく、徹底的な役作りの結果、役柄に完璧な説得力を持たせることだ。
スターに不可能はないのか。つい思ってしまうが、今回の日曜劇場『ラストマン』で、盲目のFBI特別捜査官を演じると聞いたときには、現実味がなさすぎる役柄に説得力を持たせるのはさすがに難しいんじゃないかなんて思った。いやぁ、それが取り越し苦労もいいところだった。
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