◆アーティストとしても、俳優としても実力と成功を誇る才能

 いつだったか、音楽番組に出演した福山雅治を初めて見たときのこと。アコースティックギターで弾き語りするシンプルなスタイルを見て、テレビ画面に釘付けになったことがある。ああ、こういう人をスターと呼ぶんだ。そう思った。

 稀代のシンガーソングライターである福山が、ギターにかける愛情深さは、よく知られている。クラシックギタリストを演じた主演映画『マチネの終わり』(2019年)では、平野啓一郎による原作のモデルになった世界的ギタリスト・福田進一にギターの手ほどきを受けている。劇中の演奏は福田による吹替だが、福山はクラシックギター初挑戦とはとても思えない堂々たる佇まいでクラシック界のギタリスト像を体現した。

 同作は、音楽界と映画界、そのどちらでも福山の圧倒的なスター性が遺憾なく発揮された好例だ。アーティストとしても、俳優としてもこれだけの実力と成功を誇る才能は、世界に目を向けてみても数少ないと思う。