さて、連日、朝のワイドショーでは、大谷翔平の話題で持ちきりである。右肘の内側側副靭帯の損傷が判明して、今シーズンは投手としての出場がなくなったことで、エンゼルス球団への批判は日ごとにエスカレートしている。典型的なのは東京スポWEB(8/28(月) 11:26配信)の以下のような見方であろう。
「右ヒジの靱帯を損傷しているエンゼルスの大谷翔平投手(29)に対するペリー・ミナシアンGM(43)の爆弾発言が波紋を呼んでいる。26日(日本時間27日)の会見で今月3日(同4日)のマリナーズ戦後にMRI検査を提案したところ、大谷と代理人のネズ・バレロ氏が拒否したと暴露したのだ。故障の責任を転嫁するようなあきれた姿勢だ。“エンゼルス(天使たち)”と呼ばれる球団の“悪魔”の発言に米メディアはあきれるばかり。球団の管理体制が問われている。(中略)
3日の段階で検査を受けていれば、異常を発見できた可能性があったが、決定は大谷側にあった。つまり、“故障した責任は球団にはない”という悪魔の主張だ。
たしかに大谷は検査を受けなかったかもしれないが、5月3日(同4日)の敵地カージナルス戦から98試合連続スタメン出場。投打二刀流ということを考えれば疲労蓄積している。本人の意思を尊重したといえば聞こえはいいが、マドン前監督のように話し合って“強制的に”休養させることはできた。そういう点では球団の管理責任は免れない」
だが、トラウトなどは、長い故障明けで出てきたと思ったら、またすぐに故障者リストに入り、今シーズンは出てこないかもしれない。何十億というカネをもらい、専任のトレーナーもいるのだから、体調管理は選手個々人の責任でやるというのが、大リーグ流である。
シーズンが始まる前のトレーニングも選手に任せる。その代わり、自己管理できていない選手は下に落とすか、トレードで出してしまう。大谷は食事なども自分で管理し、睡眠時間を何よりも大切にしていたと報じられている。その大谷翔平が、何よりも恐れていた靭帯の損傷に気づかなかったのだろうか。腕がつった時、おかしいとは思わなかったのだろうか。
ポストは、大谷を叩く者は人でなし、大谷は絶対に善である。そういう空気が日本中にまん延しているのはおかしいではないかと疑義を呈している。不思議なのは、誰でも何でも叩くSNSにも、大谷の悪口はほとんどないという。野球解説者の江本孟紀はこういう。
「本人が打たなくてもチームが勝てなくても『大谷、大谷』でいいのかと、ほかの選手に言いたいね」
日本でいえば巨人軍のように弱い球団で、孤軍奮闘している姿は、たしかに日本人を鼓舞する力はある。私も大谷翔平は大好きだ。だが、今回の故障は、シーズン初めから危惧されていたことだった。WBCで侍ジャパンを率い、投打に大活躍し、日本を優勝に導いたのは間違いなく大谷の力である。
だが、WBCに出た選手は、その後のシーズンではあまり活躍できないというのはよく知られている。これからシーズンが始まるというのに、その前にコンディションを最高に持っていき、そこからすぐにシーズンが始まるから、疲労は間違いなく蓄積される。
去年、本塁打の記録を打ち立てたヤクルトの村上が、なかなか調子が上がらないのも、WBCの“後遺症”であろう。だが大谷は、シーズン開始とともに投打に大活躍し、今日までの時点で、本塁打44本、投手としては10勝を挙げ、MVPの最有力候補である。
大谷を「モンスター」に例えるメディアもあった。大谷ならできる、彼は普通の人間ではないのだから。そういう“過信”が無意識のうちに大谷にもあったのかもしれない。だが大谷も人間だった。そんな当たり前のことを、今回気づかせてくれたのだが、日本の大谷翔平ファンは承服しない。
もし、大谷がもう一度「トミー・ジョン手術」を受ければ、来年1年間はほぼ休場となるかもしれない。そうなれば、NHKBSも中継をやめるだろう。再来年、大谷が再びマウンドに立った時、今のように日本中が沸くだろうか。
それはともかく、優勝など夢のまた夢になったエンゼルスに忠誠を尽くすのではなく、ここは、自己チューといわれても、自分にとって最上の選択をするべきだ。40歳になっても、マウンドとバッターボックスで躍動する大谷翔平を見たいからだ。