私は、電車に乗って、外の景色を見ながら、酒を飲むのが好きだ。大昔、取材で訪れたイタリアからドイツまで、たしかオリエント急行だったかに乗ったことがあった。駅で弁当を買うと、折の隅に小さなワインが入っていた。それをちびちびやりながら、外の絶景を眺めるのは至福の時間だった。

 もちろん列車の中には素敵な食堂があり、そこでもワインをしたたか飲んだ。 関西方面で取材を終え、東海道新幹線に乗ってすぐに小柳明人記者とレストランへ行って飲みだし、東京が近くなるころには、レストランにあったほとんどの酒を飲み干し、レストランの人間に呆れられたことも楽しい思い出である。

 だが、東京―大阪間がスピードアップし、それにつれて、レストランがなくなり、車内販売と自動販売機がそれに取って代わった。味気ない。だが、新潮によれば、10月いっぱいで、「のぞみ」「ひかり」でのワゴンでの販売がなくなり、「こだま」ではすでに廃止されているので、すべての車内販売が無くなるというのだ。

 多くの客が乗る前に食料を買い込み、車内販売を買わなくなってきているというのが理由のようだが、車内販売には何か異変が起きていないかを見て回り、緊急時に即応するという大切な役割もある。これは自動販売機ではできない。

 東海道新幹線で大阪方面に乗り、富士山が見えてきたらハーフボトルの白ワインを飲み始める。大阪に着くころには、ハーフの赤ワインが終わりになる。そんな旅も「思い出」になってしまうのか。寂しいもんだ。