国土は広大、気候は多岐にわたり、肥沃な大地が広がるアルゼンチンは約100年前には世界有数の経済大国だったが、独裁色の強かった左派ペロン大統領時代や、その後の軍事独裁政権、民政化後のそれぞれの時代での失政などにより独立以来、9回も国家財政が破綻している。最近のデフォルトは2020年で、現在も国際通貨基金(IMF)に450億ドル(約6兆6000億円)規模の債務を抱えている。いつまでたっても良くならない社会への失望は、既存政治に対するあきらめと怒りという形に姿を変え始めている。

 ノーベル経済学賞を受賞した米国の経済学者サイモン・クズネッツ氏は「世界には4種類の国がある。先進国と途上国、日本、アルゼンチンだ」と語ったことがある。戦後、驚異の急成長をした日本と、トップにいながら堕落し復活できないアルゼンチンはどこにも分類できない独自の道をたどっているという意味だ。

 歴史的にも稀な国だからこそ、世界でも稀な大統領が誕生してもおかしくはない。アルゼンチン大統領選の投票日は10月22日。結果次第では11月19日に決選投票が行われる。