◆それはまるで社会運動

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――13人のお話だけでなく、スーさんがそれをどう受け止め何を感じたかを書かれていることで、ジェーン・スーさんという人の見方や考えをうかがい知ることのできる一冊でもあったと思います。それぞれの方のお話と、ときどきの社会構造のお話をつなげて受け止められているのだなと感じるところも多かったのですが、これは意図されてのことでしょうか?

ジェーン・スー:意識をして書いたわけではないですけど、お話を聞きながら自分に引き寄せて考えると、ここにはこんな構造があったということが浮かんできました。自分の理解を深めるためにやっていたのかもしれないですね。

――スタイリストの大草直子さんが夫の転勤についていかないと決めたところで「逆に大草が転勤を命じられたとしたら」と投げかけたり、12歳で芸能界デビューして20歳で出産された辻希美さんの不安を「新卒で8年間必死に働いた女性が最初の育休で感じる不安」とされていたり、それらを読むことで自分自身、もしくは自分の身近にもあることだと感じられました。

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ジェーン・スー:北斗晶さんは「酒・たばこ・男」が禁止で25歳で引退するのが通例だった当時の女子プロレス界で、結婚してもお子さんを出産されたあともお仕事をつづけられた。「結婚しても、子どもを産んでも、自分の仕事ができる場であってほしかった」とお話しされていますが、ご自身がやりたいことを筋を通しながら徹底的にきちんとやったことで、絶対に崩せないと思われていた常識や通例のようなものを、一気に崩されたんですね。潮目を作られた、といってもいいと思います。ご本人には社会運動という意識はなかったでしょうけれど、それと同じようなことをされている。女性一人ひとりの人生と、社会は強く結びついているとあらためて実感しました。