「またゾロ手を出す」は誤植か?
余談だが、この「長編企画覚書」には誤植と思われる箇所がある。それは冒頭部の「年齢を理由に打ち止めを世間に宣言した者が、またゾロ手を出すのはいかにもみっともない」という文言。宮崎駿が引退宣言と撤回を繰り返していることは周知の事実であり、その自己批判的な言及(その後も続くのが味わい深い)ではあるのだが、“ゾロ手”というのは聞いたことがないし、ゾロ目の間違いだとしても意味がよくわからない。
おそらく、これは“ゾロ”をカタカナで表記するのではなく「またぞろ、手を出す」と表記するのが正しい。書き手が「またしても」を意味する「またぞろ」という言葉を認識できなかったのだろう。ちゃんとしてもらいたいものだ。
雑誌「SWICH」や他の映画のパンフレットへの期待
8月20日発売の雑誌「SWICH Vol.41」では「ジブリをめぐる冒険」と題して全80ページの特集が組まれており、『君たちはどう生きるか』については作家・池澤夏樹が聞き手となった鈴木敏夫へのインタビューの他、作画監督の本田雄と主題歌を担当した米津玄師へのインタビューなども掲載される。今回のパンフレットの内容にがっかりした方は、こちらに期待するのもいいだろう。
そして、劇場パンフレットは、本来であれば多数のコラムやインタビューや解説により映画の理解が深まる上に、映画を観た体験を物理的に保存することができる、日本独自の素晴らしい文化であると思う。
例えば、現在公開中の映画では『バービー』と『リボルバー・リリー』のパンフレットが、その充実した内容に称賛の声が相次いでいる。この『君たちはどう生きるか』だけで日本のパンフレット全般の良し悪しが判断されてしまうのは忍びないので、ぜひ他作品のパンフレットにも目を向けていただければ幸いである。