ビジュアルブックとしてもイマイチな作り
内容の薄さが特に酷評されている本パンフレットだが、文章がまったく載っていないわけではない。序文としての作品概要、作品解説という名のあらすじ、そして宮崎駿監督による「長編企画覚書 劇場長編を造るか?」がそうだ。
中盤のイラストではサギ男の全身像や、主人公・眞人と父・勝一の簡単なキャラクター概要も記されている。終盤では、米津玄師による主題歌「地球儀」の歌詞と、声の出演者とスタッフのクレジットも載っていた。それらの確認のためだけでも、購入の価値は確かにある。
だが、それ以外では、誰ひとりとしてインタビューも、製作経緯などの背景を語る項目もまったくない。何しろ『君たちはどう生きるか』の本編が難解で不可解なところが多く、解説や設定資料を読みたいタイプの作品でもあるので、「読みたかったことがまったく載っていない」と厳しい評価が寄せられるのも当然である。
いっそ「場面写真が大半を占めるビジュアルブック」と割り切りたくもなるが、その点でも出来ははっきり悪いと思う。後半が場面写真の連続なのはまだしも、ページいっぱいに“真横”で掲載されていたりして、本を横向きにすることを強要されているかのようで見づらい。さらに見開きいっぱいに場面写真が掲載されているページでは下に余白ができてしまっていて、その余白に劇中のアイテムがちょこんと置かれていたり、はたまた何もなかったりと一貫性にも欠けていた。レイアウトそのものに、もっと工夫の余地があっただろう。
また、現状では予告編どころか場面写真が1枚たりともネット上で提供されていないため、映画館で本編を観る以外では、公式に確認するにはこのパンフレットを購入するしかない。だからこそ購買欲が刺激されるのだろうが、実際の内容がこのありさまでは、「殿様商売」的な反感を買ってしまうのも致し方ないだろう。