※本稿にはラストシーンに言及する記述があります。

女性が被る理不尽の的確な言語化

 『バービー』が非常にすぐれた知的風刺コメディであることは論を俟たない。男性中心社会で虐げられる現代女性の理不尽を告発し、ジェンダーの呪いと洗脳を解く物語。それをバービー人形という、「長年、女性の理想的外見を女の子たちに押し付けてきた罪を背負っている(ただし現在は違う)商品」の実写化によって綴る野心的な試み。冒頭、『2001年宇宙の旅』のパロディで少女たちが赤ちゃん人形を叩き壊して巨大なバービー人形に魅了される出会い頭から、早くもその意気込みが伝わってくる。劇映画というより寓話の形を借りた批評コンテンツ、という形容がしっくりくる。