お次はあのビッグモーターについての新潮の記事。不正が蔓延していた昨年1月、兼重宏行社長に意を決して内部告発したのは、甥にあたる同社の従業員だったという。その日は、6月26日、同社の特別調査委員会が提出した「調査報告書」でも明らかになっている。
〈工場従業員からの告発黙殺〉
そう書かれた節では、同社の千葉県・酒々井店の工場長(当時)が営業成績を上げるため、従業員に車を損傷するよう指示していたと認定。
そして、
〈不適切な作業を実施させられることに不満を抱えていた他の作業員らからの懇請を受け〉
塗装作業員として同工場に勤務していた兼重社長の甥が、実態を通報したとある。
しかし、
〈社長は真摯に調査する姿勢を見せなかった〉
そのため、報告書は、
〈結局、告発を契機として不適切な行為に関する実態調査が実施されることはなく、その後も全国の工場において、不適切な行為が継続された〉
〈結果的には告発をもみ消したと言わざるを得ない〉
と、断罪しているのである。
「告発時、店では不正が横行していました」
と甥が語る。彼は兼重の長兄の息子にあたる。高校卒業後、板金店を経て、叔父の会社に入社し、塗装作業員として勤務。一旦転職するも、再びビッグモーターに戻ってきた。取材に応じるのはこれが初めてとのことだ。
「工場長の指示で不正が行われていました。もっとも、私が社長の甥であることはみな知っていたので、私の前では不正はしなかったんです。しかし、裏で指示が出されていた。報道にあるような、車をハンマーで叩いたり、サンドペーパーで傷つけたりといったようなことですね。私らは車のプロなので、見ればわかるんです」
さすがにまずいと思った彼は宏一副社長に伝えたという。この副社長は、早大卒業後にMBAを取得し、ビッグモーターに入社。行き過ぎた利益至上主義で不正を生んだ元凶といわれ、父とともに辞任した人物である。甥とは従兄弟の間柄になる。
「すると、工場長はすぐに降格になったんです。が、次の工場長に変わると不正は日常化していった。そればかりか、パワハラも酷かった。社員の胸倉を掴むなんて日常茶飯事。残業を終えて帰宅した社員を呼び出して仕事をさせたり、現場に作業を押しつけて自分はクリスマスパーティーをしたり……」
カネのためなら犯罪に近いことさえ平気で命じていたビッグモーターが、この先も社業を続けていけるとは、到底思えないのだが。