ところで、週刊現代編集部の迷走が収束する気配を見せない。鈴木章一常務が自身のLGBTQ差別発言で辞任して一件落着と思ったが、そうではなかった。やはり過去の部下へのパワハラが問題になっていたとはいえ、6月1日付で編集長に復帰した石井克尚をわずか1か月で辞めさせ、新しい編集長を据えたのである。バカなことを講談社とあろうものがなぜするのだと超嘆息した。私がいた頃の講談社は、仕事さえできれば、多少の女性問題があろうと、酒も飲めないのに銀座のクラブに入り浸っていても、大目に見たものだった。

 講談社というのは腹の太い、大らかな会社だった。そう思っていたが、どうやらそんな大らかさは消え果て、下の者を徹底的に管理し、上の意向を無理やり押しつける“嫌な”組織になってしまったようだ。マンガの儲けだけに頼りきって、赤字を垂れ流す雑誌など「問答無用」と切り捨てる。もはやこの会社は総合出版社ではない。マンガ専門出版社と改めたほうがいい。

 講談社は8月1日付で「社員の皆さんへ」と題した文書を「役員会」名義で社員に発表したという。

《本日、8月1日付で週刊現代編集部に関する人事を行いました。短期間での編集長交代は極めて異例ですが、社内の様々な意見や編集部の今後のあり方について総合的に考え、社として判断しました。このような結果を招くことになったのは、会社の責任です。社員の皆さん、週刊現代編集部の皆さん、前編集長に対して、大変申し訳なく思っています。

 このことについては、第三者を含む調査委員会の検証結果が出たところで、あらためて社員の皆さんにお伝えします》

 先日の組合に向けた文書は野間社長直々だったが、今回はなぜ「役員会」なのだろう? 以下の文章の中に、近い将来、紙の週刊現代は「廃止」して、Webにしますよと「ほのめかしている」ことが後々問題になることを恐れて、役員会としたのだろうか。

 週刊現代は、

《雑誌ジャーナリズムを体現する大人の雑誌として社会的影響力を持つ、会社にとって欠かせない大切な媒体です。情報や思想を多くの読者に届け、時には権力と対峙する―。そんな重要な役割を担っています》

 とは一応いってはいるが、続けて、

《紙の媒体が逓減傾向にある現実を踏まえ、「週刊現代」は「現代ビジネス」との融合を加速させ、紙でもwebでも情報発信をしていく編集部へと進化していきます。新しい時代に即したメディアとして再出発することを目指します。週刊現代編集部は基礎的な編集力の養成に適した部署であり、新入社員や若手はもちろん、多様な人材が安心して、意欲を持って働ける職場にしていきたいと考えています》

 広告で採算を取っている現代ビジネスと週刊現代を「融合」させていけば、その先にジャーナリズムはない。そんなことは分かり切ったことである。はっきり、講談社にはジャーナリズムはいらない、マンガと儲かっている女性誌、それにベストセラーだけを目指す単行本があればいいと“宣言”すればと、私は思ってしまうのだが。

 講談社のモットーである「面白くて、ためになる」のうちの、面白いものはやたらとあるが、ためになる方が置き去りにされているのではないか。石井編集長の最終頁の「音羽の杜から」を読んだが、辞することには触れていなかった。恰好をつける男だから、何もいわずに去ることが“美学”だと思っているのかもしれない。

 先程、編集長が変わりますという葉書が来た。新しい編集長は伊藤陽平というらしいが、私は全く知らない。石井は講談社の中では数少ない「逸材」だから、これからどんなことをやるのか楽しみにしたい。

 前置きが長くなったが、その石井編集長の置き土産というより、現在の心境を表しているのではないかと思える巻頭特集が、人生を再構築する方法である。 最初にこんな言葉が出てくる。

「私たちの人生は時として、暗い森の中に迷い込む。たとえ、それまでが順風満帆であったとしても。自分が歩んできた道は正しかったのか。後半戦に差し掛かった人生を『再構築』するにはどうすればいいのか」

 精神科医の和田秀樹のこんな言葉もある。

「今は世の中が厳しくなってきて、少し下ネタを言っただけでセクハラ、若いヤツに小言を言っただけでパワハラと言われてしまいます。日本は建前ばかりがどんどん厳しくなっていて、だからこそ現役時代は疲れるのです。しかし、本来、人間関係はもっと気楽で、ざっくばらんなものだったはずです」

 そしてこう結んでいる。

「遅すぎることはない。いつだって人生の『再構築』はできるはずだ」

 私もこれから再構築してみよう。といっても私の場合は、うまい居酒屋をもう2、3軒見つけようと思うだけだが。

 

 新潮で米スタンフォード大学スポーツ医局アソシエイトディレクターで同大学アスレチックトレーナーの山田知生が「本当の疲労対策」を語っている。スタンフォード大学は学問においてはもとより、多くのアスリートを輩出しているスポーツの名門大学としても知られている。

「疲れとは筋肉だけでなく神経のコンディションによって引き起こされるものであるというのが現在のスポーツ医学の見解です。実際、疲労を感じている人の多くは、身体のオンとオフを切り替える自律神経と、手足を動かす際などに身体の各部位に指示を出し司令塔の役割を担う中枢神経の、ふたつの神経のコンディションが悪化しています。これが、私が疲労の原因は脳にあると考える所以です」

 ではどうすればいいのか。

「まずは食事です。栄養のバランスが崩れると内臓に負担がかかり、臓器から脳への神経を通じた信号の伝達、またそれを受けて脳から臓器への指令の伝達が滞り、疲労につながるわけですが、例えば私自身は疲労対策として、アメリカでの生活では毎朝アボガドを食べるようにしています。(中略)アメリカのある大学の研究では中くらいの大きさのアボガドを6カ月間食べ続けた人は、空間的作業記憶力や問題解決能力が大きく向上したと報告されています」

「間食用としてアスリートたちは、タンパク質やミネラルといった栄養価が高いナッツ、また疲労回復効果のあるビタミンが豊富なバナナ、リンゴ、オレンジといったフルーツをよく食べています」

 逆に、アスリートが絶対に口にしない疲労を招くNG食は「甘い朝食」だという。例えばフレンチトーストやパンケーキ、これらはほぼ糖質なので血糖値スパイクを招きやすい。それは、1日を「疲れやすい身体」にして始めることを意味するそうである。私は、早速明日からアボガドを食べようと思っている。