──ほかの人に報告するために、大声で?
イ・ラン:そうそう。たぶん、それまで教室の生徒たちがコーチと「あの人たち、どんな関係なんだろうね?」って噂していたんだと思います。それで2人は傷ついて、教室に行くのをやめてしまいました。
2人が教室を去ったあと、私はクィアのために開催されているスポーツ大会に出たんです。そのことをコーチに伝えたら、「“クィア”って、なんですか?」と聞かれたんです。クィアという言葉は、初耳だと。私は、バドミントンの得点を記録する黒板に「LGBT」という文字を書いて、一つひとつ説明しました。するとコーチは「知らなかった。自分がこれまでいた体育会系のコミュニティには、クィアが一人も“いなかった”から」と言ったんです。なので、私は「一人もいなかったんじゃない。みんな、あなたに『私はクィアだ』と言わなかっただけですよ」と、伝えました。
──その人は、相手が同性愛者であるという発想がなかったから、ランさんの友人カップルを図らずも傷つけてしまったところがあるのかもしれませんね。
イ・ラン:マイノリティが、自分のセクシュアリティを明かすことで差別されて、危険な目に遭うことも多い。だからこそ、安全にスポーツがしたい人たちのために、クィアのスポーツ大会が開催されていたりもするわけです。
そのほかにも、こんな出来事がありました。私よりお姉さんの生徒の方がいて、よく話しかけてくれるのですが、ある時「いつも一緒に来ているパートナーと結婚する予定はあるの?」と聞かれたんです。そこで、いろいろな事情があって結婚は考えていないことを伝えると、「あまりそういうことは、他人に言わないほうがいいよ」と。
【こちらの記事も読まれています】