若い眞人に積み木を積んで世界のバランスを取り、理想の世界を作ればいう。理想の世界とはアニメのことだ。宮﨑駿はアニメーションで自分の理想の社会を作り上げてきた。創作が自分にとっての夢や、それを見る観客に影響を与えるはずだと信じて。

 後を継いでくれというのは、ジブリのスタッフをはじめ、若いアニメーション制作者たちや、実子である宮崎吾朗のことだろう。

 眞人は理想の世界をつくることを選ばず、ナツコを連れて現実の世界に帰る道を選ぶ。それまでは「ナツコおばさん」と呼んでいたが、「ナツコ母さん」と呼び、現実でも不思議な世界でもいがみ合い、争っていたアオサギと友達になる道を選んで。

 現実はあまりに辛いが、それでも前を向いて、友達を作って生きていってほしい。過去ばかり振り返るな、君たちには将来があるのだから。君たちは、どう生きるか!?

……という確かに説教臭い話に思えるが、それらを劇中で詳細に説明しないため、説教臭さは思ってたより薄れている。そう感じるのは意図的に説明を省いたことと、一切宣伝しないというスタイルを貫いたせいだろう。

 宮﨑駿監督は、こういったメッセージを観客(そして若い人たち)にまず体験してほしい、その上で自分たちで考えて欲しい……だからこそ説明せずに、内容をできるだけ知らせずにしようとした。体験するための映画だからだ。