この映画は吉野源三郎の同名小説と同じタイトルがついているが、原作というわけではない。宮﨑監督が以前に同作を読んだ際に深い感銘を受けており、今回のタイトルに使ったのだという。

 映画の原作ではないが、早い段階で吉野源三郎の本自体が劇中にでてくる。眞人は亡き母親からの「やがて大人になる眞人へ」というメッセージカード入りの本を手にし、読んで涙する。

 小説『君たちはどう生きるか』は年の離れた叔父さんと主人公がやり取りをする中で、社会の中で自分たちにどんな役目があるか、社会の仕組みを知っていく。

 本を読んだ眞人は微妙な関係だったナツコとの和解のために、不思議な世界に迷いこんだナツコを救おうと冒険をする。

 やがて不思議な世界の果てで眞人は、この世界が壊れないようにしている大叔父に出会う。現実の世界の大叔父は周囲から「頭は良いが、本の読みすぎでおかしくなり、姿を消した」とされている。

 この世界の大叔父は世界のバランスを取る積み木をつくって世界が壊れないようにしているが、限界が来ている。跡継ぎは自分の血を引くものにしかできないので、眞人に継いで欲しいと。

 この大叔父というのは明らかに宮﨑駿のことで、彼が積木を積むのは、自分がかつて手掛けた作品のことだ。もう自分は老い先短い老人でこれから先の未来もない。残っているのは過去しかない。だから過去という積み木を積む。