スマホの爆発的な普及やコロナ禍におけるリモートワークの影響などで、多くの人がうつむき姿勢でいることが増えています。それにともなって増えているのが「首こり」。単なる「こり」だと思うなかれ。

 東京脳神経センター・松井病院の理事長であり、脳神経外科専門医として首こりに起因する不定愁訴の研究・治療を長年行っている松井孝嘉先生によれば、なんと、うつ病や不眠、慢性的な疲労など、体と心の不調に発展しかねないのです。

◆現代人の不調の根源「首こり」にご用心!

首こり
※画像はイメージです
 というのも、首は脳と体を結び、迷走神経(副交感神経)や横隔神経、腕神経叢(わんしんけいそう)など大変重要な神経が通っているにもかかわらず、生物の進化や胎児の発生の過程において首の部分が細くなり、自律神経(副交感神経)が頸の筋肉の間を裸の形で通過する構造となってしまっている(ちなみに、進化の過程で後からできてきた感覚神経と運動神経を主体とする脊髄は周囲を脊椎骨で厳重に守られています)からです。

 いわば、静岡県の薩埵峠(さったとうげ)のように、狭い場所に国道一号から高速道路、在来線から新幹線の線路が密接して配置されているような状態。

 ここにこりが発生すると、脳と内臓の間の情報の大渋滞が起きて、自律神経の機能不全による消化管や心臓の不調をはじめ、腕や指先のしびれなど様々な症状があらわれてしまうのです。

 例を挙げると、慢性疲労症候群や自律神経うつ、緊張性頭痛から、近年では児童の間で増加し、不登校やいじめにも繋がると問題化している「起立性調整障害」(朝起きられなかったり、めまいを起こしたりする)などがあるのです。

 こうしたさまざまな不調に繋がる首こり。深刻化する前にはセルフケアが大切になってきますが、そのセルフケアも、首がとても重要な器官であるからこそ、注意が必要です。