長編第3作かつ初の英語音声映画となった『パラレル 多次元世界』は、シェアハウスに住む4人の男女が、屋根裏部屋で「時間の進みが遅いパラレルワールドへ行ける鏡」を見つける青春SFサスペンス。まるで『ドラえもん のび太と鉄人兵団』の鏡の世界と、『ドラゴンボール』の精神と時の部屋をミックスしたような設定で、その“法則”を検証するワクワク、その後に欲望を暴走させていく人間の“業”も大いに感じられる内容だった。エスバン監督作の中ではもっとも万人向けと言えるが、ラスト近くにかなりグロテスクなシーンがあるのでご注意を。

 そんなわけで、エスバン監督は超現実的なアイデアによる、限定的なシチュエーションや人間同士の争いを描き続けた作家なのだ。『トワイライトゾーン』や『世にも奇妙な物語』を思い浮かべる方もいるだろうし、個人的には謎を論理的に解明し立ち向かうことなどから『ジョジョの奇妙な冒険』も連想させられた。

 そういう意味ではわかりやすいエンターテインメント性をしっかり打ち出してもいるのだが、それぞれ終盤で「なんともまあひどいことを思いつくものだ」と良い意味で意地の悪さにも感心してしまう、世界の残酷さやはっきりと示すかのようなトリッキーで気味の悪い展開を仕込んでいる。この“ひねくれている”ことにエスバン監督の作家性をはっきりと感じるし、『イビルアイ』のクライマックスはその集大成でもあると思えたのだ。