過去の3つの監督作からわかる作家性
そんなふうに『イビルアイ』の中盤までは定番的なホラー映画とも思えるのだが、その後はさらなる気味の悪い方向へと物語がずんずんと進んでいき、クライマックスからラストにかけてはとんでもなく衝撃的な出来事が起こる。もちろん詳細はここでは伏せておくが、これが実に「この監督らしい」ものであり、これまでの作品群を振り返ると「なるほど、そうきたか!」と思えるものだった。
何しろ、アイザック・エスバン監督を“鬼才”たらしめたのは長編初監督作『パラドクス』。非常階段の一番下まで降りたはずなのに、なぜか一番上から降りてくる……というループに3人の男が閉じ込められるというあらすじで、それ以外のことはぜひ知らずに観ることをおすすめする。明かされる真相は難解に思われるかもしれないが、わかったらわかったで「なんてひどいことを考えるんだ」と良い意味でゲッソリできるだろう。なお、このシチュエーションは『チェンソーマン』でオマージュされている。
長編第2作となる『ダークレイン』は、バスステーションに居合わせた8人の男女が、謎の“感染”に怯え翻弄され続けるという内容。モノクロームの画が不気味さを加速させ続け、何より“症状”が良い意味で気持ちが悪すぎる。オチはやや力技というか納得できない人の方が多いだろうし、個人的にも引っ張りすぎに感じてしまったため、正直あまりおすすめできないが、エスバン監督の作家性がもっとも濃く表れた作品として重要だろう。
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