さて、このところ出版界の良くない話題が多いが、今度はマガジンハウスのお話。この出版社の最近の最大のヒット作は、2018年の吉野源三郎の小説を漫画化した『君たちはどう生きるか』だろう。総計200万部を超えたといわれる。

 その担当編集者であったのが鉄尾周一(64)だったそうだ。だが、彼のパワハラでここ10年の間に10人を超える退職者が出ているというのである。企画会議で「お前なんかいらないんだよ」「憎ったらしい顔しやがって」とか、「とにかく(会社を)辞めてくれ!」と怒鳴られるらしい。企画の採案は、彼の一存で、知らない、興味のないジャンルは、担当者の説明を聞く前にバッサリ。

 1年半前に労働組合から話が入り、会社が彼の聞き取りをしたそうだが、「職場環境を改善する」という曖昧な結論で、この問題にふたをしてしまったという。 現在、鉄尾周一は専務だそうだ。

 週刊現代編集部と同じような出版社でよくあるケースである。ベストセラーを出した、雑誌を売ったという功績で偉くなる。そうなると自分は万能の神のような存在だと錯覚して、部下を怒鳴りつけ、無能呼ばわりする。

 私の若い頃には、私の社にも、こうした先輩編集者が何人もいた。自分より能力のないのに威張りやがってと内心思っていた。私のように「編集長になる」と公言していた人間はさらに嫌われ、編集長から、「オレの目の黒いうちは絶対お前を編集長なんかにしないからな」と睨まれたこともあった。

 私が、そうしたイジメに屈しなかったのは、社の連中とは全く付き合わなかったからである。社外の編集者やライターたちを友達にし、毎晩彼らと飲み歩いていた。そうした人脈が、編集長になった時どれほど役に立ったことか。

 編集者諸君、上司のパワハラなんぞ無視しろ。どこへ行ってもそんな人間はいる。それよりも、会社の金を使って人脈を外に作れ。それが君の財産になる。 それが出版社という旧態然とした組織の中で、「君たちはどう生きるか」という私からの答えだ。