英国では『黒い迷宮』のドラマ化が進んでいるが、山本監督による本作は、当時の捜査官たちやティム・ブラックマン氏らが事件を振り返る日本独自のドキュメンタリー作品となっている。
治安がよく、礼儀正しく、安全な国というクリーンなイメージで語られがちな日本で起きた「ルーシー・ブラックマン事件」。ルーシーさんの母国・イギリスでもセンセーショナルな話題となった。
山本「ルーシーさんが六本木の外国人バーでホステスとして働いていたことが、事件当初の英国では大きく取り上げられていたようです。ホステスという職業が欧米にはないため、いかがわしい性風俗ではないのかという関心があったのでしょう。また、英国のタブロイド紙は憶測だけで書かれた記事が多く、『ルーシーさんは性奴隷として売られた』など、ルーシーさん一家の気分を害するような記事も出回っていました」
日本ではルーシーさんの安否を気遣うティム・ブラックマン氏の言動をテレビカメラが追い、マスコミ報道は加熱していった。
山本「ルーシーさんは観光ビザで日本に入国し、六本木で働いていました。当時の警察は不法就労している外国人にそれほど厳しくなかったのですが、逆に外国人をめぐるトラブルは事件化もされにくかったんです。それもあってティムさんたち家族は、日本の警察が本気で捜査をしているのかどうかが気がかりだったようです。日本の警察は捜査の進行状況を教えてくれないため、ティムさんは自分がマスコミに出続けることで、警察にプレッシャーを与え、世間が事件を忘れてしまうことを防ごうとしたんです。ティムさんの目立つ行動は、日本の警察との間に軋轢を生むことにもなりましたが、娘の無事を願う父親の心情としては理解できるものがあります」
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