「なすなかにし」が芸人として生きていく為に、自分たちにしか出来ない”隙間”を見つけ、そしてその芸風を貫き通し今の「なすなかにし」が出来上がった。これが「なすなかにし」さんの凄さのひとつだ。

 そしてもうひとつの凄さは、その芸風の質だ。「なすなか」さんの芸風はベタ中のベタを様々な間や見せ方を使って披露するというもので、今まで誰もやったことがない斬新な芸ではないのだ。先人たちが散々やってきて、今の芸人たちが好んでやらないような、ある意味古めかしいお笑いのスタイルを、あえてやることにより、ベタではない、ベタベタなネタになったというわけだ。

 これは他の芸人にとっては盲点であったろう。若手芸人がやりたくないベタなことを、さらにベタにし、ボケをベッタベタにすることによって視聴者には新鮮なボケに映り、それがブレイクのきっかけになった。当時こんなベタなボケをする芸人は珍しく、ベタと言えば「なすなかにし」というイメージをつけたお陰で、言い方は悪いがダサイ芸人の代表として他の芸人がネタの中で名前を使うことにより視聴者に対して知名度を広げる結果となった。ちなみにダサイというのは悪い意味ではなく、それもキャラクターのひとつであり、ある程度芸歴がある芸人はベタな芸が好きなので、必然的に「なすなかにし」さんも愛されているのだ。なので愛すべきダサイ芸人なのである。