こう聞くと全てのジャンルをこなすオールラウンダーと聞こえるかもしれないが決してそうではない。ではなぜどのジャンルにも対応できるのか。それは自分たちのフィールドに持っていくのが非常に上手いからだ。「なすなかにし」の面白かったシーンを思い出し、頭の中に思い浮かべて欲しい。たぶん頭の中に浮かんだ映像は、ロケだろうが、ガヤだろうが、トークだろうが、ほぼネタと同じようなボケのスタイルなはずだ。

 ということは「なすなかにし」という芸人はある一定の笑わせ方を得意としており、その笑わせ方は老若男女問わず笑わせることが出来、さらにどんな状況であっても自分たちが一番得意とするボケの方向へ引きずり込むことが出来るということなのだ。

 僕が芸人をやっていた十数年前、「なすなかにし」さんと共演したこともあるが、その当時は今のようなタイプの芸人では無かった記憶がある。もちろん大阪特有の強烈なベタさや、東京の芸人には出来ないテンポ感の漫才を披露しており、いかにも大阪から来た正統派芸人というイメージだった。

 ということは若手時代は今のようにベタをベタでコーティングしたような芸人を目指していたわけではなく、売れっ子で人気者の器用な芸人になることを目指したことだろう。「なすなかにし」さんは今年で芸歴22年。20年近くいろいろな方法を試しまくり、そして試行錯誤した結果、自分たちが合わせるのではなく、どんな状況であろうとその状況自体を自分たちに合わせるという結論に達したのではないだろうか。