ただ、「バドライト」の失脚について米国の飲料専門家らは、不買運動だけが要因ではないと見ている。

 市場調査会社バーンステイン・オートノマス社のアルコール飲料アナリスト、ナディーン・サルワット氏はニューヨーク・タイムズの取材に対し、米国の若い世代は、既存のものとは違う種類の飲料を、仮に高価でも買い求める傾向にあり、1982年に販売が開始されライトビールブームを築いた「バドライト」は既に主役ではなくなっていた、と分析している。常に新世代は「親の世代が飲んでいるものを好まない」という。

「モデロ・エスペシアル」の躍進にはこうした背景に加え、ラテン系住民の増加とラテン文化の定着という要因がある。米国でのラテン系住民の全人口に占める割合は、2021年に19%に達した。2000年は13%だった。約20年で6ポイント増という勢いだ。人口増加に伴うようにラテンアメリカからのビールの輸入も増え、メキシコからのビール輸入は2013年に比べて倍増している。ビールの輸入先はメキシコがトップで、2022年は2位のオランダに7倍の差をつけた。

 ラテン系のビールの消費が増えたのは、単純にラテン系住民が増加しているからではないようだ。ニールセンIQによると、この1年間でメキシコビールの販売増加率が高いのはワシントン州やニューヨーク州、オレゴン州などメキシコ国境からは遠い地域だ。いずれも前年より20%以上伸びている。メキシコと国境を接し、ラテン系住民が多いテキサス州やアリゾナ州は5~6%程度の伸びでしかない。