シリーズ中もっともダークだが、“重くなりすぎない”バランスに

 今回の物語と言えば、世界の平和を脅かす謎の“鍵”の争奪戦をするという、それだけを取り出せばシンプルなもの。だが、主人公のイーサン・ハントが“過去”に向き合い、そしてとある“選択”にも迫られるという、シリーズを“総決算”するような、ダークな印象も強くなっている。

 また、タイトルのデッドレコニング(Dead Reckoning)とは、進んだ距離、起点、偏流などから、過去や現在の位置を推定し、その位置情報をもとにして行う“推測航法”を意味しているのだが、なるほどそれが今回のイーサンの物語上の立ち位置を示しているとわかる。また、とある現代的なモチーフも登場し、荒唐無稽なアクション映画のようでいて、根底にある問題提起は決して絵空事ではないとも思い知らされた。

 そうしたシリアスさやダークさが加速していながらも、“重くなりすぎない”バランスになっているのも長所だろう。前述した“ギャップ笑い”でいい感じに中和もされるし、スパイものの醍醐味とも言える敵をあざむいて「ざまぁ!」とスカッとする逆転劇など、やはりエンタメ度マシマシな作劇も用意されているのだ。

 また、何しろベースジャンプが予告編から大きな見せ場となっていたので、それ以上のアクションはさすがに望めないだろうと思っていたら、クライマックスで「なんて面白いんだ!」と心から思える、さらなるギミックも用意。最後までサービスがぎっしりと詰まっているのも嬉しかった。