人と神の争いは終わったが、サンの憎しみは消えない。アシタカの呪いは解けたが、その痕は残り、エミシの村に帰ることはもう叶わない。それでもかまわない。サンは森で、アシタカはタタラ場で、それぞれが共に生きようと。
『もののけ姫』の主要登場人物らは、皆、罪や呪いを背負い、居場所を追われた者たちだ。絶対の正義などどこにもない。普通の物語なら最後まで生き抜いたものが絶対の正義であり、勝利者のはずだ。『もののけ姫』はそうではない。正義でない者たちが矛盾に苛まれ、苦しみながらも生きていく。美しくもない、つらい事だらけの世の中をそれでも生きていく。
「生きる」ということへの痛切な問いかけとなった『もののけ姫』。今思えばこの時点で宮崎駿監督は「君たちはどう生きるか」と観客に問いかけていた! あれから26年。若者に生きることの意味を問わずにはいられない宮崎監督のメッセージの原点がここにあった。