タタラ場を纏めるエボシは『ナウシカ』のクシャナ殿下をさらにカリスマ化したような人物で、戦争によって人買いに売られた女たちや、感染症のため住む場所を追われた、「差別されたものたち」に救いの手を差し伸べている。

 タタラ場の住民から崇められているエボシだが、彼女は生きるために自然を破壊し、それがために猪神や犬神たちと血を見る争いを繰り広げている。生み出された鉄は戦争の道具になっている。それを使えば行き場を無くす者たちが、また生まれるのに。エボシの行動は矛盾しているが、それでも生きていかねばならない。

『もののけ姫』は『風の谷のナウシカ』のやり直しだともいわれる。

『ナウシカ』では自然との共存を目指そうとするクライマックスを宮崎監督が上手くまとめることが出来ず、ヒロインが犠牲を払って奇跡が起きるという、曖昧な結末にしていた。