冒頭、エミシの村に住むアシタカはタタリ神を殺したことで、呪いを受けて村を追われる。陰湿な描写が抑えられているため、冒険の旅に出るかの様に描かれるが、許婚の少女が見送りは禁じられているにも関わらず、禁を破って大切な小刀を渡すあたりに「追放」であることがわかる。エミシとは大和朝廷との争いに敗れて国を追われ北に逃れた蝦夷のことだ。

 アシタカが辿り着くタタラ場とは砂鉄から鉄を取り出す、製鉄所のこと。劇中で描かれるような鞴を「たたら」と呼ぶので「たたら製鉄」と呼ばれる。

 この製鉄法は日本の古代から近代まで行われていたが、近代になって西洋の製鉄技術が輸入されるとたたら製鉄は廃れ、日本では島根県の菅谷たたら山内のみが当時の姿のまま残っているに留まっている(ここがタタラ場のモデルになった)。

 タタラ場では砂鉄を溶かすために、一度火を起こすと数日に渡り火が落とせない。男でも辛い仕事をタタラ場では女性たちがやっている。現実のたたら製鉄では作業場に女性が入ることはなかったというが、タタラ場では女たちが男顔負けの労働をこなし、男たちを尻に敷いている。