例えば、多くの技能実習生が母国の送り出し機関から多額の借金を負って日本に来ていることや、受け入れ先の会社がどんなにブラックでも、制度が日本での技術を母国に持ち帰ってもらう技術移転を目的としているため、原則転職は認められないこと等々。主人公のハインも平均月収が3万円の国から約100万円の借金をして日本にやってきた。

 それぞれの登場人物がまるで狂言回しの如く述べる長い台詞。誰の主張も正しく聞こえる。おバカな二世議員は「日本のグローバル化」を唱えながら、深刻な労働者不足を外国人労働者で補おうとする政策を推し進めるが、これは日本の現状を考えれば全くもって正しい主張だ。

 二世議員は現行の技能実習制度の問題点を認めつつ、解決策としての特定技能2号(熟練外国人労働者の永住につながる在留資格)を誇らしげに語るが、ラサール石井演じる監理団体の職員に、「特定技能は一見、外国人労働者を思いやっているようで聞こえは良いが、日本人と同じ給与を外国人に支払わなければならないので企業が本気でそんな制度を目指しているとは思えない」と論破される。企業の本音は多少制度に問題があっても安い給与の支払いで済ますことができる「技能実習制度」だろう。

 建前でなく本音の部分を監理団体職員は突き、最後は恩恵を受けているはずの「技能実習制度」を“現代の奴隷制”とまで言い切る。我々が頭の中では分かっていても、なかなか言い出せない本音が登場人物たちの口からどんどん吐き出される。