彼女は番組内で「親近性:新規性=7:3の法則」を説いていた。それによると、大事なのはみんなが知っていて注目度が高いもの(親近性)と、意外性やオリジナリティ(新規性)のバランスだ。たとえばYouTubeの動画を見てもらうには、サムネやタイトルなどから内容を7割くらい予想でき、残りの3割は予想がつかない常態がよい。なぜなら、私たちは脳に負荷をかけたくないので、未知の要素が大きいとストレスに感じてしまうからだ――そんな内容がレクチャーされていた。

 なるほど、なんだか納得感がある。新しすぎるものはよほど自分の心身の状態が良くないと受け付けない、というのは自分自身を振り返ってもよくわかる。録画したまま再生できていない番組は、そういう心理で再生ボタンを押せないのかもしれない、と合点がいくところも多い。

――と、思わず納得してしまうわけだけれど、ということは、この“法則”自体も親近性と新規性のバランスが7:3になっているのかもしれない。とても新しいことを言っているというより、どこかで聞いたことがある想像が飛躍しすぎない親和性のある内容を、別の文脈に置き換えて新規性を持たせているからかもしれない。確かに、企画はトガりすぎず、ベタを残しつつ、親近性と新規性の割合が7:3ぐらいがちょうどよいのだろう。