うつ病や不安障害の治療には、抗うつ薬や抗不安薬が処方されるが、約30%の患者では薬が効果を示さない。治療は長期間にわたることから、患者の生活の質を低下させる要因となっている。このため、新たな治療薬・治療法の確立が望まれている。

 同研究グループは以前から慢性痛モデルマウスがうつ・不安様の行動を示すことを見出していたため、これらをうつ病や不安障害のモデルマウスとして用いて、治療標的を探索する研究を続けてきた。また、同研究グループは、これらのモデルマウスの脳内で炎症が生じていることを確認していた。

 ミトコンドリアは、ほとんど全ての真核生物の細胞の中に存在し、細胞の働きに必要なエネルギーを産生する細胞内小器官。細胞の活動に必要なエネルギーの90%以上がミトコンドリアで産生され、周囲の細胞に供給される。従って、ミトコンドリアの正常な働きは、細胞が生き生きと元気に活動し、生命機能を維持する上で重要。

 また、ミトコンドリアはエネルギー産生のほか、カルシウムイオン濃度の調節、酸化ストレスの軽減などに関与している。